2023年秋の旅行先は、和歌山県の那智勝浦。宿は、このエリアで人気が高い「熊野別邸 中の島」です。
この旅行を決めたのが半年前にもかかわらず、ほぼ予約が埋まっている状態でした。
こちらは、奥さんにとって、子供の頃に家族旅行で泊まった思い出の宿らしいです。
・・・といっても、当時小学生の脳内は、「ホテル中の島」館内のゲームセンターで遊んで楽しかったことと、就航間もない東京~那智勝浦航路のフェリー「さんふらわあ」に乗って、夜通し船酔いに苦しめられたという2つの記憶でいっぱいみたいです(特に、船酔いで苦しんだエピソードは、これまで何度となく聞かされてますので・・)。
概要
「熊野別邸 中の島」は、全体の規模から見ると少な目な総客室数44室の宿です。
元々は、もっと規模の大きいホテルだったのですが、2019年にリニューアルして変わった模様。
特徴的なのは、勝浦港との間で運行する送迎船でしか行き来できないことですね。
この客船の待合処は、JR紀伊勝浦駅から徒歩6分のところにあります。クルマの場合は、この待合処に隣接する駐車場に止めることになりますが、15台分程度のキャパシティなので、いっぱいになり次第別の場所を案内される様です。
その様な世間とは隔絶された環境ですから、静かに過ごせることが期待できます。
アプローチ
客船待合処にはフロントのスタッフが駐在しており、こちらでチェックイン手続きを行い、夕食と朝食の希望時間とチェックアウト後の送迎船乗船時間の確認を受けました。
また、備え付けの自動販売機用のコインがもらえるので、船の到着を待つ間に飲み物を選んで飲むことができます。
要するにウェルカムドリンクですね。
送迎船が到着すると桟橋に案内されます(この桟橋は、「ホテル浦島」の送迎船と共用です)。
船内の定員は12名と多くは有りません。
勝浦湾内の乗船時間は5分前後なので、船に対して暗い思い出のある奥さんも、船酔いせずに済みます。
ホテル側の桟橋に到着すると、目の前には新館「凪の抄」。
この1階にフロントがあり、スタッフの方に部屋に案内してもらいます。なお、ホテルの建物は、この「凪の抄」と旧館「潮聞亭」の2棟構成です。
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館内
館内に掲示されていた案内板とチェックイン時にいただいた案内図です。
確かに、初見だと迷いそうなので、案内図をいただけるのは助かります。
新館「凪の抄」と旧館「潮聞亭」、それと大浴場の位置関係が分かります。真ん中の建物が「潮聞亭」で、右手が「凪の抄」、左手(方位として真西)が大浴場となります。
新館と旧館は、トンネルの通路で結ばれています。
客室
今回予約できたのは「潮聞亭」の和室ツイン。
10畳広さの畳敷きの居室にセミダブルベッドが2台とバス、トイレ、洗面台があります。
「潮聞亭」の客室の窓は南西向きで、角度的に勝浦港の方には向いていませんが、海を挟んで30m程先に釣船店があり停泊している釣り船が見えます。
また、窓から下を覗くと目の端に露天風呂の一部が見える造りです。
窓辺のテーブルには、ペットボトルのお茶と茶菓子として鮪せんべいを、その他にペットボトルの水、緑茶、玄米茶、紅茶のティバッグ、ドリップコーヒーと豊富な種類の飲み物を用意していただいていました。
画像の鮪せんべいの横にあるのは、夕食後にレストランでいただいた金平糖です。
館内着としては、浴衣と作務衣が1着ずつ。足袋風靴下もあります。
和室ツインの玄関。
2人で利用するにはとても広く、2畳分ほどあります。
シューズボックスがあり、館内用のサンダルと使い捨てスリッパも備え付けられています(使い捨てスリッパはどこで使えば良いかよく分からなかったのですが・・)。
浴室と備え付けのシャンプー、コンディショナー、ボディソープ。
浴室の床は、ひんやりしそうな見た目ですが、裸足でも気になりませんでした。
室内の洗面台です。
ポンプ式容器に入っているのは、ハンドソープ、クレンジング、スキンローション類です。
手前の包装されているものは、歯ブラシ、ヘアブラシ、クレンジングジェル、シャワーキャップ、コットン、綿棒などです。
大浴場
この宿の売りである「紀州潮聞之湯」は、目の前すぐが波の少ない穏やかな海で、元祖インフィニティデザインともいえる海との一体感を感じられる露天風呂です。
こちらが大浴場の入り口。
手前から、2階大浴場への上り階段、貸切風呂への下り階段、1階大浴場入り口、2階大浴場へのエレベーターとなっています。
入浴時間は15:00~24:00と6:00~10:00で、男女入れ替え制です。
15:00~24:00はこの画像の通りで、6:00~10:00は男女が逆になります。
脱衣所に自由に使えるフェイスタオルとバスタオルが備わっているので、それ以外に使うものだけ持って行けばOKです。
また、こちらでは「シャンプーバー」というサービスがあります。
1階大浴場と2階大浴場の内湯への入口に5種類のシャンプー、コンディショナーが用意されており、好みのものをカップに入れて洗い場に持って行くことができるようになっています。
なお、洗い場には、これらとは別にホテル備え付けのものが用意されています。
温泉の泉質は、含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉。
pH値は7.7の弱アルカリ性で、溶存物質は9.7g/kgと豊富です。
お湯は、うっすらと白濁して仄かに硫黄の香りが漂い、温泉に浸かってる感が高まります。
入浴後の肌はツルツルし、もちろんぽかぽかに温まりました。
1階大浴場(内湯)の洗い場は、1人当たりのブースが通常のホテルの2人分くらいある広さのものが7~8人分あります。
内湯の浴槽は、一度に50人は浸かれるであろうほどの広さ。
露天風呂は、内湯の横のドアから出られ、浴槽は20人くらいが浸かれる広さです。
露天風呂は、海面から3mほどの高さにあって、湯舟に浸かっている時にちょうど目の前を観光船が通ったのですが丸見えでした。そこで立ち上がるとどうなるかは言わずもがな。
2階大浴場(内湯)の洗い場は10人分で、浴槽の広さはの30人分程度。
内湯から「紀州潮聞之湯(露天風呂)」へは、内湯横のドアを抜けて1.5フロア分程度の階段を降ります(室外なので冬は寒いかもしれません)。
女性用の湯浴み着は、この「紀州潮聞之湯」へのドアの前と脱衣所のタオル置き場に置いてある様です(男湯の時間帯には置いてありませんでした)。
「紀州潮聞之湯」は浴槽が3段に分かれていて、海側から10人、20人、10人といった広さで、海から離れるほど湯温は高くなっています。その上のフロアには寝湯が3人分あります。
ここから身を乗り出すと、ホテル横に生け簀が有るのと、そこでイルカが飛び跳ねるのが見えました。
レストラン
ダイニング「熊野の恵」。
「潮聞亭」の1階にあります。
海が見える窓辺にテーブル席が10席ほどあり、内側に個室が数部屋あります。
夕食開始時間は、17:30と19:30の2部制。今回、私たちは希望する17:30に入れてもらえましたが、勝浦港の客船待合処に到着した15:00時点では、この時間はいっぱいに近かった様なので、早めの食事を希望する方が多かったのかもしれません。
ラウンジ
新館「凪の抄」の1階にあるラウンジ「磐座(いわくら)」。
24時間利用可能で、ソフトドリンクやクッキー等が用意されています。
また、19:00~22:00は梅酒バーとして梅酒や日本酒を飲むことができます。
全てフリーです。
湯上り処
「潮聞亭」1階にある「湯上り処」。
窓と反対側の壁沿いには、自由に飲食できるウォーターサーバーやアイスキャンディが用意されているカウンターがあります。
15:00~18:00の間は、氷で冷やされた缶ビールを盛った桶が置かれ、自由に取って飲むことができます。
土産物ショップ
「凪の抄」1階のフロント横にある土産物ショップ。
やっぱりお土産は那智の黒飴ですかね。
館外
「潮聞亭」の5階からは、「山上遊歩道」に出られます。
舗装はされているものの、木が生い茂るアップダウンのかなり激しい小道を300mほど進むと足湯があります。
観光で疲れて宿に着いた身にとっては、ここまででも結構なインパクトがあります。
奥さんは、ここに辿り着く前にギブアップして帰ってしまいました。
足湯からさらに150mほど進むと見晴らし台に到着。
青い熊野灘の眺めが待っています。
食事
夕食
料理は、スタンダードなプランの熊野白龍会席です。
先付は、シャインマスカットに大根おろしを和えたイクラのせ、イチジクのジュレをかけたカジキマグロ生ハム。お造りはマグロと真鯛、中心で大葉に乗せられているのはクジラです。周囲がもわっとして見えるのは、ドライアイスの演出。そして、アワビ、レンコン、山芋の蒸し物。
松阪、伊賀、熊野の和牛のしゃぶしゃぶ。つけだれはポン酢でした。さらに、金粉をのせた松阪牛がなぜかサービスで提供され、鱧(はも)の信田寿司(いなり寿司)へ。個人的には、これで終わりと言われても文句はありません。
近畿大学で養殖されたというブリヒラの西京焼き、炊き込みご飯と味噌汁、最後にデザートのフルーツポンチで終了。
食後に部屋に戻ってベッドに倒れ込みました。普段から小食の私には本当に十分すぎる量でした。
朝食
朝食は、一番早い7:00にしました。
案内された席には、和食のお膳が据えられています。
それ以外に、サラダ、梅干し、マグロの刺身、豆腐などがビュッフェ形式で用意されており、お好みで取ることができます。
タカの目チェック(女性目線で気づいたこと)
私の奥さん「タカ子」さんの女性目線による(情け容赦のない)コメントコーナーです。
紀州潮聞之湯
潮聞之湯は、ホテルのホームページ等で見たままの類を見ない絶景風呂で、泉質も大変良く、丁度良い湯温と潮風が心地良い大露天風呂ですが、角度的に「潮聞亭」の客室や屋上から、また海からも丸見えです。
もちろん、事前情報で知っていましたし、スタッフの方からもお話があり、漁船が通るとの事でしたので、白濁した湯の中にいれば問題無いと考えておりました。
ところが、私が入浴した夕方の時間に、露天風呂の縁から数メートル先に釣り客を乗せていると思われる船が停泊していて、甲板には数名の男性客が出て釣りをしていました(これは、ホテル側の問題ではないのかもしれませんが)。
湯浴み着を着ているとはいえ、素材の特性もあり湯から上がる時に体に沿ってベターっと張り付きますし、目の前がその様な状況では女性としてはあまり気持ちが良いものではなく、ゆっくりリラックスすることもできなかったため、早々に上がらざるをえませんでした。
もしかしたら、日が暮れてからの方が安心して入れるかもしれませんね。
また、かつては使用されていたと思われる、1階から「紀州潮聞之湯」に入るための入口は閉じておりました。
某口コミサイトにて「体を洗わず露天風呂に入ってる客がいて不衛生」との書き込みが認められましたので、洗い場が無い露天風呂に直接入ることが出来ないようにとの配慮なのかもしれません。
そのため、先ず2階大浴場にて体を洗い、その後に湯浴み着を着て階段を降り、露天風呂に出るような動線になっていました(この階段も、マンションの非常階段のように狭くて、私たちの訪れた秋の夕方の空気は寒く感じられました)。
それから、湯浴み着は大人用のMとLサイズのみですが、女児はどうするのでしょう。
こちらの宿に小さな子が来るケースは多くはないのかもしれませんが、Mサイズでさえ子供が着るには丈が長すぎて足元が危ういでしょうし、子供なのだから気にせず裸のまま入れということなのでしょうかね。
今や、世界中の人々が1人1台、撮影も可能な機器を持ち歩き、色々な趣味嗜好の方がいる時代であることに配慮していただけたら嬉しいです。
比較的最近にリニューアルされたこともあり、時流をとらえた他の部分は良い印象であったにもかかわらず、このお風呂の環境についてだけがポッカリと昭和の感覚のままという印象を受けました。
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最後に
専用の送迎船を使わないとアクセスできない立地といい、すぐ目の先にある海を感じながら入浴できる泉質の良い露天風呂といい、この宿ならではのものが2つもある特別な場所という印象を受けた「熊野別邸 中の島」。
今回は、残念ながら新館の方に泊まることはできませんでしたが、それでもこの宿の特徴はとても良く感じることができました。
その中でも、何といっても特徴的なのは、世間と隔絶された環境です。
そこから得られるものは、世間の喧騒から離れて、静かに心穏やかに時間を過ごせるということでしょう。
やはり宿泊客の方々は、その様な要望を持たれている方が多いのか、比較的年配の方の様に見受けられました。
それに対応する様に、ダイニングのテーブルの配置は、間仕切りを使用したり、空間を広く取ったりしていただけている様でした。
もう一つの特徴の露天風呂に関する課題については、奥さんのコメントにもある通り、絶海の孤島ではないことから、周辺環境や時代の変化との折り合いをどのようにつけるかという難しい問題をはらんでいますが、安心安全に過ごしたい女性のニーズを如何にうまく取り込めるかが、さらにこちらの宿が発展できるかのキーになる様に思います。
それでも、この宿を支えるスタッフの方々は、宿泊客の高い要望を満足させるために、何気ない瞬間にも控えめながらも繊細な気配りをしていただいていると感じることができました。
最後に、宿を離れ勝浦港に戻る際に、送迎船が出発してからその姿が見えなくなるまで一所懸命に手を振ってくださったスタッフの方の姿が印象的でした。
<関連情報>
「熊野別邸 中の島」公式サイト
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